言の葉の天日干し

感想置き場

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

タイトルだけ知っていて読んだことのない本を読んでみよう企画パート1。

 

表紙やタイトルが醸し出す雰囲気とは裏腹に、想定していたよりもかなり読みやすかった。

決して爽快な展開ではないが、かといって極端に不愉快な描写があるわけでもない。それはこの作品を通して描かれる「人間性ヒューマニズム)」の思想が理解しやすいものだったからだろう。主題に対する主要人物の倫理観は、心あるものならば必ずや共感できるはずだろうと私は信じたい。

映画のブレードランナーを見たことは無いが、タイトルから察するに、設定を活かしてエンタメ方向に振り切ったアレンジがなされていると予想する。近いうちに見て確かめます。

昔のSF(ここで思い浮かべている作品は『2001年宇宙の旅』と『ニューロマンサー』など)は終わり方が哲学的で、思想に重きを置いて静かに物語の幕が下りる。ハードボイルドという概念およびその定義について私はあまり詳しくないが(チャンドラーの『ロング・グッドバイ』は確実にその概念に当てはまるとは思うが)、本作はその潮流の中にあっても決して違和感がないものだろうと思う。

 

タイトルはこれ以上ないほど素晴らしい。読了した人には、ぜひとも「人間は天然羊の夢を見るか?」と問いかけたくなること請け合いだ。

 

人間にとって、一番大切なことが描かれているお話だった。