言の葉の天日干し

感想置き場

ドラクエ11Sの感想

好きな絵師さんが描いたベロニカちゃんのイラストに一目惚れし、体験版をダウンロードしてオープニングムービーから王道RPGの波動を感知しワクワクしながら進め、気づけば製品版を購入し夏季休暇を9割BETし過ぎ去りし刻まで求めた人間による感情文です。

 

ストーリー進度は過ぎ去りし刻を求めた後で、禍々しい試練を受けている最中。多分もうすぐクリアするのかなあという感じです。クリアしたくない(面白すぎるから終わらせたくない)。

 

とある最期のイベントで呆然とし、その後の展開にいい話だなあと思いながらも心ここに在らずで話を進め魔王を倒した。

スタッフロールが流れる中「最高に面白いゲームだったけど、仲間が一人足りない絵面が悲しすぎる。あのイベント以降いまいち乗り切れなかったな」などと振り返り、冒険の書を上書きする。データに★が付いた。これから2周目が始まるのかなと思いつつゲームを続ければ、どうやらTOD2方式でクリア後に後日談がある流れ。海底洞窟崩壊後と同質の喪失感に襲われているけれど、このゲームは最高に面白かったので最後までしっかり見届けたい。たとえ、大団円に仲間が一人足りなくて、宴を他人事のように眺めて一層寂しくなるだけだとしても。
――なんて思っていたから、過ぎ去りし刻を求めて本当の2周目が始まり彼女の姿を半日ぶりに目にして、僕は居間でボロッボロに泣き崩れた。

この言葉は作品の印象を安っぽくしてしまう気がしてあまり好きな表現ではないが、他に適する表現が思いつかず、かつ事実であるので、申し訳なさを強く感じつつ何度でも言わせていただく。

泣いた。

このゲームで何回泣いたか分からない。

テオの優しさやロウの回想など目頭が熱くなった場面を挙げれば本当にキリがない。なかでも痺れたのは勇者の母ペルラのセリフ「やられたらやり返すのはかっこ悪いこと」。現代のゲームで、こんなかっこ良いテキストを堪能できるとは思っていなかった。
愚痴になってしまうが、ここ数年は新しいゲームをしてもテキストに憮然とすることばかりで王道を求めるなら昔に帰るしかないと思っていた。「ああ、このシリーズのターゲット層からは外れたんだろうな」と察して興味が完全に無くなり、シリーズだからという理由で購入を決めるゲームは年々減っていた。
僕はわりとゲーマーで、特にRPG好き(ゼノブレイド無印大好き,デルタルーン発売待機中)を自認しながらもドラクエを遊んだことがなくて、モンスターといえばスライムとバラモスとゾーマしか知らなくて、甲子園で演奏されるラスボスっぽいbgmイイよねと思っている程度のドラクエ未経験者だった。二週間ほど前までは「ドラクエって人気あるけど面白いのかな?」と思っていた。今なら断定できるが当然愚問である。
ドラクエ11は序盤から僕の予想を良い意味で裏切っていった。レッドオーブが無いと知ったとき、デクは友人を生贄に巨万の富を召喚しデルカダール下層民やかつての友を見下すような怪物になってしまったのだと思った。でも、違った。デクは友人のことを忘れたことがなく、それどころか脱獄を助力すべく自腹を切って兵士を買収していて、声を上げて友との再会を喜んだ。
一連のイベントがひと段落したとき、僕は長年離れていた故郷に帰ってきたかのように肩の力が抜けた。
――露悪的な展開を警戒して肩肘を張らなくてもいいのか?
そうである。
ドラゴンクエスト11は、どこまでも不安を裏切っていくゲームだった。
どんなに辛いことがあっても、期待を胸に前へ進めば進むほど明るい未来へと繋がっていった。

このゲームは、僕にとって勇者だったのかもしれない。