言の葉の天日干し

感想置き場

三体Ⅱ 黒暗森林

読んでいた時の二つの特殊な状況も相俟って、長く記憶に残りそうな一冊です。

一つは、面壁者レイ・ディアスの場面を読んだ翌日にアメリカがベネズエラの大統領を拘束したこと。

あまりにタイムリーだったので、「読んでる最中の小説のif展開が現実で今まさに起こることなんてあるんだ……」と不思議な驚きに包まれました。

そしてもう一つは、人生で初めて手術を受けた日の夜に、痛みを堪えて読み進めたこと。

夏頃の記事で、左脇腹が痛いのは持病の潰瘍性大腸炎だろう、と書きましたが、実は全く別の臓器に腫瘍があることが判明し、それを切除する手術を受けました。

幸い良性で術後の経過も良く、順調に快復していますが、臓器が体から無くなると寂しい気持ちになるんだなあと思いました。まあ、誰にともなく立つ瀬がないような申し訳ない気持ちは時の流れに身を任せていれば無くなるはずなので、深く考えないようにしています。

読んだ箇所は、たしか下巻に入ったばかりで、羅輯が理想的な生活を過ごしていた頃だったと思います。本を読もうと横になる姿勢を取ると傷が痛み、読むのを止めて寝ようとしても痛みが気になって眠れず、時刻はまだ朝にはほど遠い深夜二時。あの夜は本当に長かった……。

 

水滴の場面に感じた圧倒的なスケールの大きさは一巻の飛刃の再来で、本作で一番昂揚した箇所です。怖くてわくわくが止まりませんでした。3巻ではどのような世界を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。

最終決戦の舞台は全ての始まりの場所であり、文学的な美しさが胸を打ちました。

回答については、宇宙の質量が常に一定なら、地球の何らかの生命体の数を爆発的に増やすことで三体人を絶滅させることができるかもしれない――といった予想を立てていましたが、大外れでしたね。正解は私には全く予想もつかず、ぐうの音も出ない鮮やかなものでした。

羅輯の導いた回答は、オーウェルの『1984』を彷彿とさせる発想で、中国の作品ならではの感性が現れていると思いました。海外文学は世界によって視点が違うことの面白さを享受できるのが嬉しいですね。

羅輯が面壁者で本当に良かったと思います。